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『お道具&竹竿マニア』なアングラーが、フライフィッシングをキーワードに、
道具や森羅万象、さまざまなモノ、コト、を『辛口&主観的』な視点で書いています。

2013/03/14

Alchemy Tackle The Alchemy Japanese Trout #07




"The Alchemy Japanese Trout #07" のカタログを作ってみた。

いまのところ、売り物はこれ1個しかないのだけれど・・・


磨かれた金属の肌もいい、でも、使い込んで古びてくるとなんともいえない味が出てくる。
それが、表面処理をしていない金属のよさだと思います。

特に銅が主成分の合金はいい。

このリールに使っているブロンズ(青銅)もニッケルシルバー(洋白)も、
銅に何種類かの他の金属を混ぜた合金です。
ブラス(真鍮)も、おなじように銅の合金です。
混合の具合によって、色や特性が変わるのがおもしろいですね。


ちなみに、このリール、お値段は税込みで100,000円。

国内送料はサービスいたします。







2013/03/11

異質のフライロッドビルダー

無造作に置かれた竹竿が・・・























待ち合わせた国道沿いにある洋服屋の駐車場に駐めてあるジムニーの窓の中で、そちらへ歩いていく僕を見つけて会釈する髭の濃い長髪をひとまとめにした男性は、「フライフィッシングの人」というよりは猟師のように見えた。
強いて釣り人でたとえるならば、コアな磯釣り師か、放浪のバスアングラー。
いずれにしても、竹でフライロッドを作ってる人には見えなかった、ってことですね。


京都に羽舟さんの弟子で、面白い竹竿を作る人がいる。

そんな情報を頂いたので、その方の氏名をググってみると、フリースの竿によく似たグリップ周りのデザインの竹竿を使ってフローターでバスを釣っている写真が載っているFacebookを発見。

あの極めて繊細な竿を作る中村羽舟さんの弟子が竹竿でバス釣りをしている。
そんなことはありえないような、でも、よく考えると、さもありなん、という気もしてきた。

とにかく、竹竿を作っている人に好奇心をそそられたのはひさびさのことだし、なんだかおもしろそうだったので、思い立ったが吉日とばかりに、ご自宅件工房を訪問するアポイントをとったのでした。


この、濃い顔にひげ面長髪の、とてもバンブーロッドビルダーには見えない、マタギのようなジムニーのドライバーが北岡勝博さんといって、羽舟さんの工房でしばらく修行されてきた方でした。
修行といっても、竿作りを教えてもらったわけではなく、2週間ほどずっと朝から晩まで羽舟さんの側にいて、羽舟さんの作業を見ながらいろんなことを話し続けただけだ、とのことです。

「フライの竿なんてひと月もあれば出来るようになるよ」

と平気で言われる中村羽舟さんを知っているだけに、なるほどなあ・・・、
伝えるとは、こういうことなんだろうなあ、と。

北岡さんの自宅工房には、竹片をいじるための埴輪型をしたコンロのカバーとタメ木がありました。
羽舟さんのやり方をしっかりと見て吸収してこられたようです。


北岡さんの作る竹竿ですが、

素材は近所の竹林から自身で切り出してくるマダケで、ソリッド構造、竹フェルールがメイン。
巻き糸はマダケの繊細で滑らかな肌と色を生かしたクリア(無色のシルク)。
アクションは基本的にセミパラボリック系、フライラインの乗りを重視したスロー寄りのアクション。
先端径がマッチ軸の半分もないような極繊細な竿から、先太のバスやアメマス用で#7ラインを使用する竿まで多岐にわたります。

僕の目から見ると、さすがに芸大の出身だけあって、フリース竿のデザインバランスの良さをベースにマダケの柔肌に合わせた、シンプルな中に極めて繊細な感覚のある日本のデザインだと思います。

でも、いまだにグリップのスタイルには悩まされているようです。
「どんなデザインのリールを持ってこられてもいいように」
そして
「どんな色のフライラインにでも合うように」
という2点が北岡さんがデザインを考える上でのベースにあり、そのうえで、既存のどの竿にも似ていないオリジナリティを求める。
そりゃ、難しいだろうと思います。
オールコルクのリールシートを持つグリップは、アップロックとはいえ、ふつうにいちばん使いやすいと感じられる前の少し太めなストレート気味のシガーでやっちゃうと、ヤングやフリースそっくりになってしまいますから。

そのグリップですが、いまのところ、軽くて繊細な竿には「フィッシュテイル」で落ち着いているようです。

不思議な形の段落としになっているグリップは、トラウトロッドです。






















工房でひとしきり話したあと、近くの神社の裏にある森の中へ移動して北岡ロッドを振らせて頂きました。

ラインを通さないで振ると、柔らかいなあと感じます。
こんなに柔らかくって大丈夫かなあ、と不安にさえ感じる人が多いのじゃないでしょうか。

ラインを通すと、トルクのあるストレートなラインが前後に走り出します。
ラインのスピードを上げてもついてきますし、ゆっくりとしたラインにしても落ちそうで落ちない。
ループはきれいに解けていきながらリーダーまできれいにターンオーバーします。
アンダー気味のサイドキャストをすると、ラインが落ちないというメリットがよりよく感じられると思います。

ふたりで竿を振りながらの会話の中での、「ラインがどんなに飛んでもリーダーとフライがその先でちゃんとターンオーバーしないと意味がない」という言葉が印象的でした。
もうひとつ付け加えるならば、フライラインの軌跡にブレが見られないので、かなり精度の高い竿だといえます。


アクションの傾向は2種類あって、ひとつは、振っているうちに手に竿を持っているという違和感がなくなるようなナチュラルな感触の竿。キャスティングを意識しないでもフライラインが勝手に伸びていくように感じます。
もうひとつは、キャスティングをしたときにあえてグリップあたりにキックするパワーを持たせた竿です。この感触は言葉では表現しにくいのですが、ストロークの後半で竿がブーストを加えるとでも言えばいいのかもしれません。ナチュラルな感触は失いますが、アイディアに溢れたおもしろい竿です。

ティップがフライラインの半分ほどの太さしかない竿もおもしろかった。
あまりの細さに最初は怖々振ったのですが、おもいっきり振っても大丈夫でした。ストロークの最後でギューッとグリップを押し込んでいくと、早いラインがスパーッと気持ちよく伸びていきます。
極細のティップから繋がる竿全体としてのバランスが取れているのでこういう感触の竿が出来るのだと思います。
ただ、ティップのあまりの細さに、渓流では遡行時にどこかに引っかけて破損しそうで持ち歩くのが恐いように感じました。


このとき振らせて頂いたすべての竿がストリッピングガイドにワイヤーのスネークガイドを使っていたのでそのわけを聞くと、硬いガイドを使うと、取り込み時にそこの硬さが違和感になるのだそうです。
トップガイドは自作の羽舟式なのですが、他のスネークガイドも自作しようと、そのための治具を発注しているそうです。
北岡さんと話していると、ガイドの重さと硬さに対するかなりのこだわりを感じました。それも見た目や理屈でそうしているのではなく、体感として感じている。
この人は自分でかなりの魚を釣ってきた人だなあと感じました。


北岡さんが本業として竹竿を製作して市販するのは今年からだそうで、1本目は桐生の島崎さんが、2本目(3本目だったかも)は制作中で工房の壁にぶら下がっていました。
おもしろいビルダーさんを近くに発見したので、これからが楽しみです。